Inbreeding avoidance through kin recognition
実は、恥ずかしながら、Kokko and Ots 2006は読んだのだか、Lehmann and Perrin 2003はまだ読んでいないので、昨日はLehmann and Perrin 2003を読んだ。数式いっぱい。分からないところは結構飛ばしてしまった。だが、かなり重要ですばらしい論文。モデルは苦手だが、今度本腰を入れて完全に理解せねば。以下のまとめも結局アブストと同じようなものになってしまった。
Inbreeding avoidance through kin recognition: choosy females boost male dispersal
Laurent Lehmann and Nicolas Perrin
The American Naturalist vol.162, No.5, pp.638-652
一般的に、polygynousなシステムでは、雄に比べて雌の方がinbreedingのコストが大きいため、inbreedingによって個体の分散が促進されるのであれば、分散する性は雌のはずである。しかしながら、例えば哺乳類では多くの場合雄が分散する。この問題を解決しようとしたのがこの論文である。
結果としては、雌の側にrelativeな雄を回避する能力 (kin recognition) が進化しえるのであれば、分散する性は雄となるということである。
この論文で重要な結果をまとめると、以下のようになる。
○inbreeding depressionが強く、包括適応度を考慮してもinbreedingが有利である場合で、かつ、雌のsearching costが低い場合、雌の選り好みと雄の分散が進化する。この進化は、good geneの進化モデルと相似である。
○inbreeding depressionが弱い場合、雌は逆にrelativeを選り好むように進化する。雄は分散しない。
○どちらの場合でも、searching costが高い場合には、すべての雄を受け入れるように進化する。
モデルから考えると、inbreeding avoidanceは進化しにくい。なぜなら、polygynousなシステムの場合、δ > r / (1+r) でないとinbreedingの方がむしろ有利になるからだ。ただし、完全なmonogamousな場合 (かつsearching costが0の場合) は、inbreeding toleranceは0になる。完全なmonogamousでなくても、雌との交配が、雄のその後の交配を制限すればinbreeding toleranceは下がる。従って、これまでincest avoidanceが多く観察されてきた理由は、雌との交配が雄のその後の交配を制限する and/or inbreeding depressionが現在予想されているよりもだいぶ高い、ということが考えられるとしている。
なお、polygynousという条件だと、inbreeding toleranceはr / (1+r) になるが、雄が雌に出会いにくいとかそういう条件を少しでも考慮に入れると、inbreeding toleranceがぐっと上がるということ示したモデルがKokko and Ots 2006の論文である。
さて、僕の関心は、ヒトの場合はいったいどうなのか、ということだ。ヒトは雌との交配が (特に結婚) が雄のその後の交配を大きく制限し、また、現代では (おそらく狩猟採集時代も) mate encounter rateは結構高いと考えられる。しかし、inbreeding depressionはそんなに高くはないようだ (Bittles and Neel 1994: 1.4 lethal equivalents)。さて、ヒトの場合はinbreeding toleranceを超えているのか超えていないのか・・・。超えていないにしても、ヒトではincest avoidanceはどうも起こっているようである。どういうことか。きちんと勉強して整理しなくては。
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